私の作品は、蒔糊という糊の粒を使って表現しています。
蒔糊は江戸時代から使われているものなのですが、故森口華弘先生はそれをきもの全体に使い、独特なひとつの表現技法として確立されました。
蒔糊は米粉や糠(ぬか)に亜鉛松やリン酸を加え、こねたり、蒸したりした後、板に薄く練りつけ、天日で乾かし作ります。
蒔糊の大きさで表現に幅を持たせるため、それを細かく砕いて何種類かの大きさの蒔糊の粒にします。
その粒を、濡れた生地の上に手でふっていきます。
そして蒔糊が乾いた後、全体の量を見ながら、塊をピンセットで弾いて整えていきます。
整えて全体に均一に(デザインによっては、ぼかしたり、模様にしたりします)なったところで、下から水を含んだ刷毛でぬらし、上から霧を噴きかけたりして、生地に蒔糊を定着させます。
それから、染料の発色をよくするために、豆汁(水でふやかした大豆をすりこぎで潰して水に溶かし、濾したもの)を蒔糊の上から刷毛で引いていきます。
その後、地色を染めていきます。
そうすると、蒔糊の部分が染まらずに蒔糊の形が残り、白い粒粒が現れるのです。
蒔糊は不思議な粒粒です。
星になったり、光になったり、
雪になったり
風になったり、波になったり 、、、
すべてのものがこの小さな粒粒でできているのではないかと思える程に、蒔糊の表現は多様です。
そんな蒔糊の世界をこれからも深めていきたいと思っています。